電力貯蔵/技術レビュー

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サマリー

電気エネルギーはクリーンで使いやすいため、エネルギー消費全体に占める割合は今後も高まると予想される。電気エネルギーを貯めることが可能になれば、発電所の効率的運用と利用時の効率向上など、さまざまなメリットが出てくる。中大型の二次電池による電力貯蔵は、昼夜間需要シフト、各種自然エネルギー発電の供給安定化等に寄与することから、ナトリウム硫黄電池、レドックスフロー電池、鉛蓄電池等では大規模な電力貯蔵設備の実証試験を経て用途によっては実用化段階に達している。一方で、リチウム二次電池、ニッケル水素電池は近年急速に開発が進み、性能向上も著しく、大型化による電力貯蔵用への適用の期待も大きい。

1.電力貯蔵の概要

A.電力貯蔵の規模・特徴

電力貯蔵技術により、ある時間帯の余剰電力を蓄電し、電力が不足している時間帯に利用することができれば、電気エネルギーをより効率よく活用することができる。いわゆる定置型の電力貯蔵の用途は、電力負荷平準化、電力系統安定化、自然エネルギー発電の出力安定化、需要家の負荷変動対応、電力品質対策などがある。
各種用途の電力貯蔵システムは規模で整理すると以下のように大別できる。

B.各種の電力貯蔵技術

一般的に、電力貯蔵技術には以下が要求される。電力貯蔵システムは用途によってその使われ方が大きく異なるため、これらの各項目の重要度も大きく異なる。

電気事業で広く使われている電力貯蔵技術に揚水発電があるが、一般に需要地から遠隔な地域に貯水池(上池・下池)を伴う大規模設備を必要とし、建設期間は長期に亘る。また、圧縮空気エネルギー貯蔵は海外においては大規模電力貯蔵システムの実用化例もある。この他にフライホイールや超電導電力貯蔵(SMES)がある。これらと比較して、二次電池は技術的に実用化に近い段階に達している電力貯蔵技術といえる。中大型の二次電池による電力貯蔵は、昼夜間需要シフト、各種自然エネルギー発電の供給安定化等に寄与することから、ナトリウム硫黄電池、レドックスフロー電池、鉛蓄電池等では大規模な電力貯蔵設備の実証試験を経て用途によっては実用化段階に達している。一方で、リチウム二次電池、ニッケル水素電池は近年急速に開発が進み、性能向上も著しく、大型化による電力貯蔵用への適用の期待も大きい。
一般的に、他の電力貯蔵技術と比較した二次電池の長所には以下がある。

電力貯蔵システムの用途は、これまで電力負荷平準化が主で、電気事業側に設置する大規模システムが多かった。最近は、負荷変動に追従が難しい各種の電源に電力貯蔵システムを組み込み、そこで生じる効率向上やユーザの使い勝手の向上などのメリットに注目が集まっている。このような用途は従来の二次電池が必ずしも適しているとは限らず、新たな観点で実用化開発が進められることが望まれる。
今後は風力、太陽光の自然エネルギーによる発電など各種分散形電源の導入が進み、多様な需要が増加していくと予想される。電力系統としてこれらに対応しながら安定した電力供給を行うためには、「電気の流れを自律的に制御する」系統制御が必要になると考えられる(1)。この系統制御技術はパワーエレクトロニクスと情報通信を駆使し、時々刻々の負荷変動や周囲の状況に追従して、個々の制御装置が絶えず最適解を求め、きめ細かく電力の流れを調整する。この流れを的確に調整するには、電力供給の各段階に、電力貯蔵システムが必要不可欠になると考えられ、その活用方法の検討は重要である。このような次世代電力系統はスマートグリッドとも称され、特に欧米では急速に関連技術の研究開発が開始され注目を集めている。わが国でも太陽光発電の大量普及を想定した次世代電力系統の構想がいくつか提唱されている(2)。負荷平準化を目的として基幹系統に導入されてきた揚水発電やナトリウム硫黄電池による電力貯蔵システムに加え、需要家に近い系統や需要家に設置する電力貯蔵システムの活用も検討に含まれている。
電力貯蔵技術としての二次電池の技術開発は国内外で積極的に進められている。わが国においては「新・国家エネルギー戦略」の中で、次世代蓄電池技術の開発を「革新的なエネルギー高度利用の促進」の施策のひとつとして取り上げるなど、重要な技術開発課題として位置づけている(3)。その中で、自然エネルギーを利用する風力発電および太陽光発電の出力安定化に資する長寿命で低コストな蓄電池等の開発は大きな課題である。これを受けて国の「エネルギーイノベーションプログラム」の下「次世代蓄電システム実用化戦略的技術開発事業」として、(独)新エネルギー・総合技術開発機構(NEDO)は平成18年度から関連する技術開発プロジェクトを開始した。新たな用途に適した二次電池の実用化開発とともに、将来的な発展の基礎となる次世代技術の研究開発を進めるために、今後の益々活発な取り組みを期待したい。
わが国では、二次電池をはじめとした電力貯蔵装置の実用化が進み、設置事例が増えつつあることから、改めて電力貯蔵設備の位置づけが検討された(4)。「電気設備に関する技術基準を定める省令」において、「電力貯蔵装置とは、電力を貯蔵する電気機械器具をいう」として定義され(平成20年4月経済産業省令31号)、法令上の概念が明確化されている。また、併せて「電気事業法施行規則」が改正され、それまでは発電所と同様な工事認可が必要となっていた電力貯蔵用電池は、電池容量80,000kWh未満の場合には規制が大幅に緩和された。なお、電力貯蔵用の二次電池に関する民間規格として「電力貯蔵用電池規程(JEAC5006)」が平成12年に制定され、技術の進歩に伴って改訂が実施されている。

2.各種電力貯蔵の用途

A.電力負荷平準化

わが国ではいわゆるエネルギー自給率は2006年で約19%と低く、エネルギーの安定供給の確保は重要である。電力需要の増加の一方で、発電設備の利用効率を表す年負荷率(年間の最大3日平均電力に対する年間平均電力の比率)は1980年代以降の50%から2003年以降は60 %台に回復しつつあるが、更なる改善が課題である。また夏季電力需要の昼夜間格差は約2倍と大きい(5)(6)。
電力会社は変電所等に電力貯蔵システムを設置し、夜間電力と蓄電し昼間に利用することで、昼夜間の需要シフトを実現することが可能となる。電力会社は常に夏季昼間などの最大需要に備えて発電所や電力流通設備を整備している。電力貯蔵技術の活用で電力負荷平準化ができれば電力設備のより効率的な運用が可能となり、発電・流通設備増強への投資抑制など電力会社のメリットが生じる。これらは電気料金低減につながる可能性もある。発電するときの二酸化炭素の排出原単位は電源構成とそれらの発電電力量比率によって決まる。わが国においては昼間に比べて夜間の二酸化炭素排出原単位は小さい。高効率の電力貯蔵技術を活用できれば、二酸化炭素排出量を削減できる可能性もある。
電力負荷平準化用途で実用化されている代表的な電池としてはナトリウム硫黄電池がある。ナトリウム硫黄電池は、国内では1980年に着手された国のムーンライト計画の一環としての開発と、併行して電力会社等で開発が進められ、電池の大型化によるエネルギー密度向上とコストダウン、および、安全性評価試験の実施と規制緩和への取り組みがなされてきた。寿命性能は単電池で目標である15年以上、2250サイクル以上を見通している。負荷平準化システムが最も基本的なシステムであり、ヒータ消費電力を考慮した総合効率も安定している。非常電源機能や瞬低対策機能を付加した導入事例もある(7)。
同様にバナジウム系電解液を用いたレドックスフロー電池もオフィスビルや大学の負荷平準化システム等で導入されている(8)。レドックスフロー電池は容易に貯蔵電力量を変更でき、出力・容量をニーズに合わせた設計が可能であるため、大規模な電力貯蔵システムを構築可能である。
実用的な電力貯蔵用の大型蓄電システムには鉛蓄電池も適用されている。1980年から10年間実施された国のムーンライト計画「新型電池電力貯蔵システムの開発」の中で、電力会社の変電所で1 MW級システムの実証研究がなされ、充放電効率87%、寿命性能は1500サイクル以上を達成した(8)。その後開発された制御弁式鉛蓄電池では、寿命2000サイクル以上(DOD70 %)を達成している。また、3000サイクル以上(DOD70 %)のより長寿命を達成した顆粒クラッド式鉛蓄電池を用いて30 kW電力貯蔵システムが試作されている(8)。電力貯蔵システムに適用可能な鉛蓄電池の開発は継続している(9)(10)。
リチウム二次電池については重電メーカと電力会社が共同で開発した電力貯蔵用システムがある。単電池の予想寿命を3500サイクルとし、電力貯蔵システムとしての電池充放電効率は97 %である。単電池を80直列接続した交流電力容量定格27 kWhの電力貯蔵システムを単位ユニットとし、複数台設置で容量を拡大し、電力変換器を一体管理・制御することで、大規模システムを構築できるとしている(11)。また、ニッケル水素電池の電力貯蔵用電池への適用を目指し独自構造の大容量電池の開発への取り組みがある(12)。
一方、電力系統に設置する電力貯蔵システムを需要家サイドに設置する形態も考えられる。各電力会社は昼夜間の電力量料金に格差を設けているため、需要家は数10kWh級の電池電力貯蔵システムにより、安価な夜間電力を有効活用し電力量料金の低減が可能である。また、より小容量のシステムにより電力負荷ピークを低減させることで、時間帯別料金制度などの活用により電気料金の低減を図ることが可能になる(13)。たとえば、コンビニエンスストアーで昼間時間帯の集中的な需要増加利用により、電力会社との契約電力容量が増大する。この短時間負荷の平準化にも電力貯蔵システムは有効である(14)。併せて、万一の停電、瞬時電圧低下に備えて、負荷平準化機能に加えて非常用や無停電電源用などの電力品質向上機能の付加により、災害時などのライフライン確保やIT設備の保護が可能となる。近年普及が拡大している全電化住宅では、電力貯蔵の活用で安心感を得ることができ、ユーザにとってメリットと考えられる。
需要地系統や需要家では、メンテナンスフリー、常温作動が必要条件である。非常用電源などの目的で一部試験的に鉛蓄電池が導入されているが、コンパクトさや効率を考慮するとリチウム二次電池やニッケル水素電池などが利用しやすい。わが国ではニューサンシャイン計画の中で、NEDO「分散型電池電力貯蔵技術開発」(平成4~13年度)で大容量リチウムイオン電池の開発が実施され、電気自動車など移動体用として3 kWh級電池モジュールとともに、住宅へ設置する定置型電力貯蔵用として2 kWh級電池モジュールが開発された(15)。また、早期の実用化を推進するため、住宅への設置を想定し2kWh級小型蓄電システムが開発された。ニッケル水素電池については円筒形単電池(95 Ah)を用いた電力貯蔵システムを開発する取り組みが発表されている(16)。

B.電力系統安定化

電力系統とは、発電所で発生した電力を送電線により消費地に輸送し、工場等に供給するとともに、配電用変電所を介して、家庭等に分配するシステムの総称である。①電力の生産と消費は同時であること、②周波数変化は全系的であること、③電圧変化は局地的であること、④故障は皆無ではないこと、が特徴である。電力会社は変動する需要に対して、水力・火力・原子力発電等の供給力の特性を考慮しつつ、最も経済的な効果が得られるように常時電力の供給と需要のバランスをとっている(需給運用)。また電力輸送設備の工事、点検、保守等に係わる設備停止、復旧、雷や台風等による故障時の復旧操作、電力融通などに伴う系統切替、潮流監視等により電力系統を管理している(系統運用)(17)。
供給力のうち、火力発電の割合は約6割であり負荷変動に対応した運用をする上で重要である。負荷変動に柔軟な対応をするためのミドル火力、1日の負荷曲線のピーク部分を分担し、短い起動時間、良好な負荷追従性が求められるピーク火力により、1日の負荷変動への対応を行っている。燃料別にみると主にミドル火力はLNG、ピーク火力は石油である。また、連続運転を維持するための最低出力は定格の1/8~1/2程度と比較的大きい。一方、1日~1週間程度の調整が可能な調整池を有する調整池式水力は、昼間の重負荷時に発電電力を増加させる運用が行われる。ただし、調整能力は貯水量の保有状態によるため、火力発電と併せて運用される。貯水式水力では1カ月~1年間の調整が可能である。また、揚水式水力は上下に貯水池を持ち、深夜、休日などの軽負荷時に揚水し、それを上池に貯水してピーク時に発電する。揚水発電は起動停止および出力調整が容易で負荷変動への即応性が優れるため、周波数調整等に利用される。揚水発電の総合効率は約70%とされるが、原子力発電、火力発電の深夜余力などを利用して経済的な運用が可能な場合は活用される。これらの他に、落雷や台風等による系統故障の復旧時でも急峻な変動に対応するための出力調整が行われている。
化石燃料を用いる火力発電による需給調整は、今後は低炭素社会の実現のため炭酸ガス排出量低減の観点から、より制約されることも考えられる。一方、調整池を有する水力発電、貯水池を有する揚水式発電は立地に制約があり、新設には長期の設置計画が必要となる。火力発電、水力発電による調整力を補完するものとして、周波数調整を目的にした電力貯蔵システムの活用が考えられる。また、電力変換器を有する電力貯蔵装置は有効電力とともに無効電力を制御できるため、電圧変動の抑制にも用いることができる。これらは大容量、高信頼性を実現するためのシステム制御技術の確立が必須となる。また電力系統全体としての経済的な運用が必要である。
海外では電力貯蔵技術として超電導電力貯蔵やフライホイール等の他に、二次電池の活用も検討されている。電力系統が安定している国内においても、離島などの特定の地域でローカルに構築する小規模な電力系統(いわゆるマイクログリッド)では、系統安定化のために活用可能な調整力が小さいため、電力貯蔵システムの導入が試みられている。比較的容易に電力消費地域の近傍に設置でき、設置リードタイムが短い二次電池による電力貯蔵システムも検討されている。NEDO「新エネルギー等地域集中実証研究」における「八戸市 水の流れを電気で返すプロジェクト」では、マイクログリッドに鉛蓄電池(100 kW)を設置した試験研究が実施された(18)。また、NEDO「新エネルギー等地域集中実証研究」における「2005年日本国際博覧会・中部臨空都市における新エネルギー等地域集中実証研究」では、マイクログリッドにナトリウム硫黄電池(500 kW)を設置し、試験研究が実施された(19)。

C.自然エネルギー発電対応

わが国では、2003年の「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」(いわゆる、Renewable Portfolio Standard(RPS法))の制定など、二酸化炭素の排出削減とエネルギー源多様化のための施策として自然エネルギー発電の普及を推進している。太陽光発電、風力発電の設備規模は2005年時点で各々1000 MWに達した。2010年の国の導入目標は風力発電3000 MW、太陽光発電4820 MWであり(20)(21)、独立システムだけでなく電力系統に連系する形態でも、更なる普及のため自然条件に依存する発電電力の安定化が必要であり、電力貯蔵技術の利用が方策のひとつとして検討されつつある。
風力発電や太陽光発電に併設する電力貯蔵システムには、一般的に求められるエネルギー効率、耐用年数、コスト、エネルギー密度、等の他に以下の特徴的な要件がある。

太陽光発電への電力貯蔵システム設置の必要性は、雲による日射遮蔽等による短周期変動の平滑化の他に、主に1時間程度以上の比較的長周期な変動を対象とすると、高い供給信頼性の確保、逆潮時の配電線電圧上昇の抑制、負荷ピークと発電ピークの整合、逆潮流なしの余剰電力有効利用、等がある(23)。
事業用としてMW級の大容量太陽光発電システム(メガソーラー)の導入が今後期待されている。事業用発電として成立するためには、信頼性のある供給力として活用可能とするため、他の発電所と同様に事前の発電計画に基づいた一定出力制御を実現することが望ましい。このため日射予測を活用しつつ電力貯蔵システムを運用する試みがされている。NEDO「大規模電力供給用太陽光発電系統安定化等実証研究」では、今後普及拡大が図られる可能性のある大規模太陽光発電システムの導入時に電力系統の電圧、周波数等へ及ぼす影響について調べるため、北海道・稚内市においてナトリウム硫黄電池を用いた太陽光発電の出力安定化、系統電力のピーク対策目的の計画運転、電圧変動抑制効果等の実系統での検証が行われる。
一方、一般住宅に太陽光発電を設置した場合では、消費しきれない余剰電力を電力会社へ逆潮することにより売電も行われている。逆潮電力により配電線の電圧は局所的に上昇する。太陽光発電の住宅地への導入が進み配電線に集中的に連系された場合には、配電線の電圧が高くなり逆潮できず売電できないことも起こりうる(24)。配電線の電圧を一定に維持するためには発電電力の逆潮電力の抑制が必要となる。これを回避するために電力貯蔵技術を活用することが考えられる。NEDO「集中連系型太陽光発電システム実証研究」では群馬県太田市の住宅に設置した太陽光発電システムに鉛蓄電池を設置し、集中連系時に想定される出力抑制回避を技術的に検証するため、模擬配電線を用いた試験が実施された(25)(26)。
また、太陽光発電の発電出力の有効活用のためには、電力貯蔵システムにより住宅内など設置場所における需要時間帯と発電時間帯とのずれを補完するピークシフトが必要となる。わが国では太陽電池定格容量の4倍程度の電力貯蔵容量が必要との試算があるが、適切な電力貯蔵容量を設定するためには発電出力の想定と電力需要から日中の余剰電力の算定が必要である。電力貯蔵システムを住宅個別ではなく数戸ごとやコミュニティーに一括して導入で、設備容量を抑制しつつ効率的な運用を図る考え方もある。
太陽光発電を利用するためには、直流を交流に変換する電力変換器が設置される。電力変換器に小容量の二次電池を付加すれば、電力変換器の制御技術を活用して無効電力補償、高調波電流補償、太陽光発電出力・負荷変動平滑化などの機能を追加する多機能化が可能である(27)。上述のNEDO「大規模電力供給用太陽光発電系統安定化等実証研究」でも、様々な種別の太陽電池モジュールの大規模システム構築・運用評価とともに、系統安定化制御が可能なパワーコンディショナーの開発が実施される。
一方、風力発電は刻一刻と変化する風に伴って発電出力が常時変化し電力系統はその影響を受ける。また、需要が小さく電力会社の調整予備力が小さい夜間にも発電する。このため新たに設置する風力発電に対しては、電力系統の安定化のために風力発電設備を電力系統から切り離す解列や電力貯蔵技術の活用を条件とする動きがある。そのための電力貯蔵技術としては、風力発電の数分から数時間の出力変動を緩和する短周期対応運転と、夜間発電分を吸収し1日単位での変動を緩和する長周期対応運転が求められる(28)(29)。また、合成出力制御方法により平滑化運転とフラット運転に大別できる(30)。
風力発電に併設する電力貯蔵システムは大規模になるため、容量低減を図るため風力発電の発電出力予測に基づく運用の検討がされている。高精度で予測できれば計画的な充放電が可能となる。ただし、特定地域に限定すると予測も難しくなり、ある程度広域での運用が必要である。
その他に、系統との連系、切断時の電圧変動が課題である。特に風力が過剰に強くなって切り離した後に、再度系統に接続するときは許容量の最大値で電力が入り込むことになる。誘導発電機を採用した風力発電機では、インラッシュ電流により、系統の状態によっては電圧低下などを引き起こす可能性があり、無効電力補償装置(SVC)などの系統安定化装置が必要となる。同期発電機と可変速インバータの組合せではこの影響は低減される。風力発電は立地上、僻地に設置される傾向が多く、比較的弱い系統への変動は極力抑える必要がある。
これまでに、風力発電へ併設した二次電池システムとしては、NEDO「蓄電池併設風力発電導入可能性調査」の中で、八丈島風力発電所の風力発電機単機にナトリウム硫黄電池を併設した(22)。大振幅かつ高頻度の充放電電力の繰り返しでは、システム効率向上を図るために補機の消費電力・電力量の低減が課題である。ほりかっぷ風力発電所に設置したレドックスフロー電池、竜飛第七風力発電所に設置した鉛蓄電池の試験研究も実施された(22)。また、NEDO「風力発電電力系統安定化等技術開発」において、北海道・苫前ウィンビラ発電所(風力発電定格30 MW)に6 MWhのレドックスフロー電池を設置し、数秒から20分程度以下のウィンドファーム出力変動を平滑化させるため、蓄電システムの制御技術等を開発、検証した。比較的短時間の変動を平滑化する目的で電気二重層キャパシタによるシステムも開発されている。
これらの用途に適用する二次電池の開発も行われている。太陽光発電へ併設する二次電池として、ニューサンシャイン計画の中で実施されたNEDOの「太陽光発電システム実用化技術開発 太陽光発電システム評価技術の研究開発」(昭和60年度~平成8年度)では、100 Ah-12 Vの密閉型ニッケル水素電池の電池モジュール開発が行われた(31)。また「次世代蓄電システム実用化戦略的技術開発事業」として実施されるNEDO「系統連系円滑化蓄電システム技術開発」では、主にウィンドファーム規模の風力発電・太陽光発電の変動吸収を目的とし、MW級の高性能で低コストな蓄電池の開発を目的としている。(1)蓄電システムの大型化対応など実用化に資する技術開発、(2)蓄電システムの低コスト化、長寿命化等に資する要素技術開発、(3)次世代の新型電池に関わる技術開発、(4)蓄電システムの安全性・寿命などの評価に関わる基盤的検討、が実施される。

E.負荷変動対応

大きく変動するパルス負荷は電力系統に動揺を与えるため、系統への影響を抑制するためには需要家側で対策が必要である。大電力パルス負荷としては、例えば、核融合用磁場発生に必要な電力、製鉄の圧延に必要な電力などがある。
頻繁に変動する負荷機器の電力消費を電力貯蔵装置により吸収できれば、エネルギー効率の向上などのメリットもある。需要家に設置された負荷機器の省エネにつながる。近年、エレベータは高速域タイプは回生コンバータを利用した省エネが進んだが、低速域タイプでは電力量が少ないことから回生により生じる電力を回生抵抗で熱消費している。この回生電力を回収することで省エネ化が可能である。省エネに加え、停電時に乗客を近い階に下車させるための緊急稼動、エレベータ起動時の負荷変動抑制、高調波抑制効果が望める。ニッケル水素電池を利用したエネルギー回生により、実機での試験運転で省エネ効果として約30%のエネルギー削減が得られている(32)(33)。
電気鉄道における電力負荷は、力行、惰行、回生などの重なりにより著しく変動するため、き電回路内に電力貯蔵システムを導入することで、負荷平準化やき電電圧の安定化が図れる。この用途には大出入力などの運転条件に対応し長寿命が期待できる電気二重層キャパシタの適用がある(34)が、鉄道車両への搭載を考慮し、エネルギー密度の高い二次電池の適用も検討されている。

F.電力品質対策

瞬時電圧低下(瞬低)は送電線への落雷等が原因で生じ、年に多くても1、2回しかない停電とは区別される。瞬低は年間数~10回程度の頻度で起きている。停電は1分以上と長いが瞬低は0.36秒未満が約90%で残りが1秒以下である。瞬低により工場などの各種電気機器の作動に影響が出ており、これを補償する電力貯蔵システムのニーズがある。
瞬低対策として、電解コンデンサを利用し10~100%電力低下に対する2~0.1秒間の電圧補償装置や、電気二重層キャパシタを利用した1秒までの電圧補償装置などが商品化されている。電解コンデンサや電気二重層キャパシタは数秒以内の短時間で完全放電する。一方、二次電池は数秒間では完全に放電することはできないため、瞬低、短時間停電対策として二次電池でシステムを構築しても、保有する容量を十分には活用できない。これに対して、常時は電力負荷平準化に利用して、容量の一部を瞬低・停電用に利用するシステムでは、負荷平準化と瞬低・停電補償との併用利用が可能となり、より長時間の停電補償も可能である。負荷平準化による電気料金の低減に加え、UPS費用の削減が可能となる。

参考文献

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